[1]造血幹細胞移植療法の臨床研究 図1 造血器腫瘍におけるMLF1の発現 (Northern blot 法) [1]肺癌治療におけるPBSCT療法の研究 図2 樹状細胞 図3 培養14日目の顆粒球/マクロファ-ジコロニ-(CFU-GM) [2]GVHDの重症度予測と病態解明の研究 内科学第一講座は、造血器腫瘍や肺癌などの悪性新生物、および原因不明の内科疾患を診療の対象としている。教室の研究目標は、必然的にこれら難病の本体解明と治療法の確立となる。この責を担う21世紀の医師育成のため、後期卒後研修では一流の教育関連病院の協力を得て高度総合内科カリキュラムを実践するとともに、関連基礎講座および病院輸血部との連携のもと臨床応用を目的とした大学院教育の充実をはかっている。
1997年11月までの5年間に従来の治療では長期生存が望めない20例について骨髄移植療法(BMT)を行い、良好な治療成績が得られた(岸本裕司講師担当)。特に成人T細胞白血病ではBMT後にHTLV-Iウイルスが検出されなくなり、治療法のない本疾患に対する今後の治療戦略が示されたことは特筆に値する。一方、レシピエントが罹患していた自己免疫疾患がBMT後に治癒する現象やドナーの自己免疫疾患がレシピエントに移行する現象がみられ、本疾患を造血幹細胞病とする池原説(本学第一病理)を臨床症例で証明することとなった。悪性リンパ腫については、輸血部(野村昌作併任講師)の協力のもとに自己末梢血より造血幹細胞を安全に採集する手技を確立した(北島弘之助教授)。これにより、末梢血幹細胞移植(PBSCT)を併用した超大量化学療法を日常的に行うことが可能になり、allo-PBSCT実施への貴重なデータが得られた。
[2]骨髄異形成症候群(MDS)関連遺 伝子MLF1に関する研究
高齢者に多発するMDSは、原因不明の慢性骨髄機能不全症であり、しばしば急性骨髄性白血病(AML)へ進展する。加藤規子助手によって分離されたMLF1遺伝子は、MDSの白血病移行期症例、および未分化型とMDS由来白血病症例において強く発現し、これらMLF1強発現群の予後は不良であることが明らかになった。現在、MDSの白血化におけるMLF1遺伝子の制御機構の役割の解明に研究を進めている(加藤規子助手)。
2. 呼吸器病学
進行期肺癌に対する内科的治療は依然として有効性が低い。とくに小細胞肺癌(SCLC) は化学療法に感受性はあるが、予後は極めて不良である。教室ではSCLCの8症例についてPBSCT療法を行った(米津精文講師)。末梢血からの造血幹細胞の採集効果は悪性リンパ腫症例より低率であったが、患者の生存期間を確実に延長させた。PBSCT後の免疫変動では、suppressor/cytotoxic Tの活性化が肺癌で著明であり、NK細胞の増加もみられた。高齢者の多い肺癌では幹細胞を効率よく採取するための寛解導入・採取療法について工夫を加える必要性がある(鈴木正彦講師)。21世紀前半にはPBSCTを利用した免疫療法と遺伝子療法を実施したい。
[2]呼吸器疾患の肺免疫能の解析
直接外界と接触する呼吸器は、特有の生体防御機構を発達させている。しかし、この機構には不明な点が多い。新しく組織された研究グループ(山口和之助手)は、気管支洗浄液の免疫能測定を計画している。免疫能の評価は、従来の研究とは異なり樹状細胞(dendritic cells: DC)の性状と動態の検索に基づく。DCは強力な抗原提示細胞であり、病的状態にあるDCシステムを理解することは、呼吸器疾患特有の病態成立の理解と新しい治療戦略の開発に役立つ。
3. 免疫病学
[1]膠原病患者における血管炎発症に関する基礎的研究
膠原病患者では、血管病変やそれに伴う血栓の合併頻度が高く、時に致命症となる。膠原病における血管病変の主体は血管炎であり、血管内皮細胞(EC)表面の接着分子を介する分子機構が深く関与している可能性がある。そこで、膠原病における血管炎発症のメカニズムを明らかにするため、好中球やマクロファージの活性化及びそれに伴うサイトカイン活性化とECとの関連性について研究を進めている(香川英生講師)。
Graft versus host disease(GVHD)は、BMTに際し移植片由来の免疫担当細胞がrecipientの臓器を障害する反応であり、しばしば致命的合併症となる。その原因は、HLA およびminorの主要組織適合抗原(mHA)の相違の認識による。教室では、輸血部(野村昌作講師)との共同研究によりサイトカイン測定によるGVHDの早期発見と重症度の予測を進めている。さらに、未だ不明な点が多いGVHDの本体を樹状細胞の性状と動態の変化から解明する研究を準備している(岸本裕司講師)。
研究の展望
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