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脳神経外科学講座
Department of Neurosurgery
教授 河本 圭司

1. 脳腫瘍部門

 [1]脳腫瘍の増殖能と分子生物学的研究
 手術の全例に、光顕・電顕・組織培養を行い、30年間の標本が蓄積している。悪性グリオーマに対して、PCNA・BrdU・Ki67による組織免疫染色により、悪性度との相関を見いだした。培養細胞を用いて、抗癌剤によるアポトーシスの発現を分子生物学的に研究した。FISH法による脳腫瘍の染色体異常の発現を見いだした(図1)。日本脳腫瘍病理学会の編集局を設置し、機関誌である“Brain Tumor Pathology”を国際誌として発刊している。

図1 FISH法による染色体No.17の異常


 

 [2]フローサイトメトリー(FCM )を用いたcell kinetics研究
 FCMにより種々の脳腫瘍のDNA量を解析し、悪性脳腫瘍では、aneuploidyが多いこと、増殖指数が高いこと、これらは臨床的予後と相関することを研究した。種々の抗癌剤(ACNU・5FU・CDDP)による細胞周期別障害を明らかにした。又、サイクリンD1が腫瘍細胞の回転に重要な役割を果たしていることを証明した(図2)。日本サイトメトリー学会の機関誌“Cytometry Research”の編集局を担当している。

図2 FCM法によるサイクリンD1の解析
 

[3]電子顕微鏡による脳腫瘍の微細構造の研究
 種々の脳腫瘍の微細構造を研究し「脳腫瘍の電顕アトラス」を出版した。FCMにより、細胞周期別に分取した細胞についてその微細構造の特徴を明らかにした。

[4]頭蓋底外科手術法の開発
 手術困難な頭蓋底腫瘍は、耳鼻科・形成外科と協力して、その手術にあたっている。その中でも、前頭頭蓋底における巨大髄膜腫瘍・副鼻腔から癌の頭蓋内浸潤例について、fronto basal approach法の開発とその有効性について研究している。 [5]再発悪性脳腫瘍の治療
 再発悪性脳腫瘍に対する治療はまだ確立されていないが、我々は手術治療に加え、化学療法として、初回ACNUから再発時にはCDDP(カルボプララン)、IFN-βによる新しいプロトコールを研究中である。また、再発腫瘍に対して、in vitroで各種抗癌剤の感受性検査を行っている。

2. 脳血管部門

 [1]脳血管内皮細胞へのTNF剤投与によるPAI-1測定及び放射線による影響
 5年前より、豚脳血管内皮細胞に着手し、最近この培養法を確立した。この内皮細胞にTNFを投与し、tissue Plasminogen activator(tPAI)抗原量の増加を認め、血栓性の亢進による脳腫瘍効果が期待された。又、内皮細胞の放射線に対する強い抵抗性が示された。

[2]血管内外科による解離性脳動脈瘤の治療及び髄膜腫の塞栓術
 解離性脳動脈瘤に対しては、外科的直達手術は困難なことが多い。特に椎骨・脳底動脈系に発生した場合、脳血管内外科により、近位部閉塞により、動脈瘤の縮小がみられ、効果があった。又、髄膜腫の手術前に外頚動脈より塞栓物質を注入し、手術時に出血を抑制することが出来た。一方、動静脈奇形に対しても、超選択的に塞栓物質を注入し、劇的に消失しており(図3)、今後の臨床応用が期待されている。

図3 動静脈奇形の血管内外科手術(左 術前、 右 術後)

 

3. 脳神経外科小児部門

 [1]二分脊椎の発生機序について
 二分脊椎の発生機序については多数の説が唱えられているが、確定的なものはない。ニワトリ・マウスを使用し、コンカナバリンA・ビタミンAで処理し、二分脊椎を作成した。前神経孔が閉鎖する前後に処理するとexencephaly(図4)、もしくは広範な神経管の閉鎖不全の状態が、後神経孔が閉鎖する時期に処理すると、胸部もしくは腰部に神経管の閉鎖不全の状態が得られた。処理タイミングと奇形の種類との間に相関が得られ、神経管の閉鎖不全が原因と考えられた。また羊水に接したneural placodeではGFAPが過剰に発現し、胎内に存在する間からすでに脊髄の神経自体に退行変性が生じている可能性が示唆された。

[2]Chiari II 奇形の発生機序につ いて
 先天的に二分脊椎を有するSpd/Spd系およびビタミンAで二分脊椎を誘発したマウス、また、神経管を外科的に切開したマウス・ニワトリ胎児の後頭蓋窩を観察した。Chiari奇形は二分脊髄の部分から髄液が抜け出した結果生じてくる二次的な病態であることが示唆された。

図4 Anterior neuroporeが閉鎖すると考えられている時期にVit-Aで処理することで作成した妊娠16日目のマウス胎児

 

4. 脳神経外科救急部門

 [1]重症頭部外傷患者の低体温度 療法中のIL-6の変動
 救急の場合、救命救急センターに出向中の脳神経外科指導医が治療にあたっている。救命救急センター医とともに重症頭部外傷患者に対して、低体温療法を行い、IL-6を測定することにより、その予後が推定できることを明らかにした。全国的な組織として“脳神経外科救急研究会”の事務局を設置している。

[2]脳死判定における鼻腔導入脳波自動解析
 脳死状態の患者に対して、脳波聴性脳幹反応を検査しているが、我々は法医学との共同研究で、鼻腔導入脳波自動解析を独自に考案し、脳死と判定された患者に鼻腔導入脳波の出現がみられることを見いだした(図5)。

図5 脳死患者の鼻腔導入脳底部脳波

 


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