慢性関節リウマチに対する保存的、外科的治療は教室の中心テーマとしてきた。各関節の滑膜切除術については、術後長期経過例の観察からその意義について検討し、数多くの報告を行ってきた。薬物療法の進歩に伴い、本手術の頻度は減少したが、症例を選べばなお有用な治療法であることを明らかにした。関節の機能再建術についてもその長期成績、問題点について検討した。変形性関節症と肥満との関連について減量療法の効果を含めて検討した。基礎的研究についてはHLA-DRBI遺伝子型とRAの骨破壊進行度との関連性を検討した。個々の症例で全く異なる自然経過を有する慢性関節リウマチの予後を予測することは、手術のタイミングを含めた治療計画を立てる上で極めて重要である。その結果、RA感受性遺伝子を両方の対立遺伝子に有する患者では、ヘテロ接合体や感受性遺伝子を有しない患者に対して、骨破壊の進行が急速であることが明らかとなった。RAの滑膜細胞における活性酸素、各種サイトカイン、神経ペプチド等の生化学的解析を行い、RAの病態について検討した。また、各種関節疾患の関節液についても同様の検討を行っている。
図1 未だ最重症(grade V)になっていない慢性関節リウマチ症例の割合 図2 硬膜外刺激、硬膜外記録の脊髄誘発電位を用いた術中モニタリング 図3 Silastic implantに対する生体反応 図4 後天性股関節脱臼観血的整復例における術後のCE角の推移 高齢化社会の到来に伴い、高齢者の運動器疾患に対する外科的治療の必要性は、ますます増えていくと考えられる。過去10年間、多くの術式を確立してきた。なかでも、慢性関節リウマチの手部障害に対する種々の術式、高齢者に対する脊椎手術、関節手術は、特記すべきものであると考えている。さらに経験を重ね、より高度な手術方法を目指して、臨床的な研究を行っていく予定である。基礎的な研究は、今後も慢性関節リウマチの病態に関するものや脊髄・神経疾患に対する電気生理学的研究が中心になるだろうが、臨床にもとづき、かつ臨床に還元される研究であることを念頭におき、継続していきたい。
S/S群:感受性遺伝子のホモ接合体、
S/N群:感受性ヘテロ接合体、
N/N群:感受性遺伝子なしの患者
縦軸:単純X線像上、Larsenのgrade Vになっていなかった症例の割合。
横軸:慢性関節リウマチの罹患年数
Toda et al.(1994) Ann Rheum Dis 53:587ー592.
Akagi et al.(1997) Clin Rheumatol 16:284ー290.
Tanabe et al.(1997) Jpn J Pharmacol 74:347ー351.
Toda et al.(1997) J Rheumatol 24:2304ー2307.
2. 脊椎疾患に関する臨床的、基礎的検討
臨床的研究については、多くの脊椎疾患の治療をとうして、病態、適切な治療方法等について検討した。腰椎変性疾患については高齢者及び若年者椎間板ヘルニア、変性すべり症、あるいは変性側彎症に対する手術治療成績を検討してきた。その中で、近年発達の著しい脊椎インストルメンテーションの腰椎変性疾患に対する意義やその合併症についても調査した。外傷性疾患については、従来稀とされてきた退行期骨粗鬆症に起因する脊椎圧壊後の遅発性神経障害例を調査し、その病態、適切な治療法について検討した。また、胸腰椎破裂骨折に対する手術成績についても検討を加えた。脊椎感染症については特殊な起炎菌や麻痺を合併する脊椎炎について報告し、感染性脊椎疾患に対する脊椎インストルメンテーションの意義についても検討した。頚椎疾患については頚髄症に対する治療成績を検討し、術後の頚椎アライメントの変化や合併症としての神経根障害の発生メカニズムについて検討した。基礎的研究としては経頭蓋磁気刺激運動誘発電位を用いた術中モニタリング法を開発した。脊椎手術が高度かつ複雑になるほど、術中の脊髄に対する侵襲は不可避である。本法の開発により安全で、高度な脊椎手術が可能となった。また、脳脊髄液中の神経ペプチドの解析により、各種疾患の発痛のメカニズムについて検討した。
Akagi et al.(1995) Spine 20:1510ー1514.
Akagi et al.(1996) Scand J Rheumatol 25:337ー339.
Saito et al.(1992) Electroencephalogr Clin Neurophysiol 85:337ー344.
3. 手の外科領域に関する臨床的、基礎的検討
伸筋腱の術後早期運動に関する研究について内外で報告した。手関節を背屈位に保持して、屈曲を制限しない方法は多数の支持を受けている。慢性関節リウマチの手の病変に関しては、手の作業療法を術直後からの装具療法を含めて導入し、術後成績を著しく改善させた。特に手のADL障害が強い症例には積極的に手術を行い、ADLとQOLの改善を得ている。尺側偏位やボタン穴変形に積極的に手術療法を取り入れ、その成績を報告した。基礎的研究については、Mayo Clinic,Hand Center of Western New York との共同研究で、silicone synovitis の病理、手舟状骨の形態に関する研究等、数多くの業績を上げている。
術後4カ月の髄腔:新生骨がsilicone particleを含んだ炎症性組織により浸食されている(×200)。
Minamikawa et. al. (1992) J Hand Surg 17A:268ー71.
Minamikawa et. al. (1994) J Hand Surg 19A:575ー83.
4. 小児整形外科に関する検討
小児整形外科疾患は人口構成の変化に伴い減少しつつあるが、決してなくなることはない。また、患児が成人に達するまで、長期にわたる経過観察が必要な領域である。過去に経験した多くの小児整形外科疾患(先天性股関節脱臼、先天性内反足、先天性膝関節脱臼、先天性下腿弯曲症、骨頭すべり症等)について長期治療成績を調査し、その問題点について検討した。
●は最終調査時成績良好群, 〇は不良群を示す。成績不良群では3〜5才時に骨頭の求心性不良でその後の臼蓋発育も不十分である。
研究の展望
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