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皮膚科学講座
Department of Dermatology
教授 堀尾 武

1. 紫外線の免疫学的作用に関する検討

 紫外線によって誘発される皮膚疾患の発症機序の解明と、良性・悪性疾患に対する紫外線療法の奏効機序に関して臨床及び基礎的研究を行ってきた。日常遭遇する紫外線誘発疾患として、光接触皮膚炎、薬剤性光線過敏症、日光蕁麻疹がある。近年広く使用されている抗菌剤は、薬剤性光線過敏症の主要な薬剤でありその副作用により使用が規定されることがある。我々は、その発症機序を光線テストにて検討し、いかに同剤を安全に使用することができるかについて解明した。さらに、日光蕁麻疹では作用波長、抑制波長、増強波長を解明し、光接触皮膚炎など種々の光線過敏症ではサンスクリーンの有用性を検討し患者のQOLを高めることができた。

図1 紫外線発癌。

 一方、アトピー性皮膚炎や乾癬などの炎症性疾患と悪性T細胞リンパ腫に対して紫外線や光化学療法(PUVA療法)が劇的に奏効することを報告してきた。これまでの本講座での研究により、紫外線は表皮細胞や血管内皮細胞の接着分子に影響を与えること、皮膚細菌感染症より分離した菌に対して抗菌作用に加えスーパー抗原産生抑制作用を有すること、in vitro で表皮角化細胞の活性酸素関連酵素に影響を及ぼすことが解明されており、これらの事象より紫外線の奏効機序として、その免疫学的作用が重要であると考えられる。

図2 悪性リンパ腫(菌状息肉症)に対する光化学(PUVA)療法の効果

 さらに紫外線の免疫学的作用に関する基礎的研究として、local とsystemic 型の遅延型アレルギー反応に対する紫外線免疫抑制現象を解析し、紫外線照射条件により抑制程度が修飾を受けることを見いだした。近年これら紫外線の免疫抑制作用とともにDNA障害作用により、先に述べた紫外線誘発炎症性疾患に加え、通常の治療量を越える過剰な紫外線照射や、老年までの長期にわたる日光曝露により皮膚悪性腫瘍が誘発されることが危惧されている。そこで、紫外線易発癌疾患である色素性乾皮症のモデルマウスを用いて、皮膚免疫反応を検討し、遅延型アレルギー反応抑制やランゲルハンス細胞の障害が顕著に出現することを見いだした。現在、紫外線発癌における免疫抑制効果に、紫外線照射表皮細胞からのサイトカインやNK細胞などの免疫担当細胞が重要な働きを有しているのではないかと考え、本動物モデルを用いて検討中である。

図3 紫外線によりLangerhans 細胞は減少し、抗原提示能が抑制される。

1 Horio T. et al (1994) J Dermatol Sci 7:130-135
2 Nakane H. et al (1995) Nature 377: 165-168
3 Miyauchi H. et al (1995) J Invest Dermatol 104:364-369

2. 皮膚細菌学に関する基礎的、臨床的検討

 皮膚細菌感染症は朝田前教授の主要テーマの1つであり、毛嚢脂腺系感染症である 瘡の発症および増悪に関する研究と、皮膚細菌感染症より分離同定した黄色ブドウ球菌について検討してきた。 瘡誘発の四大因子である皮脂分泌の亢進、毛包漏斗部の異常角化、毛包内細菌の増殖、炎症の惹起・増悪について研究を行い、毛包漏斗部のケラチン発現の違いや副腎皮質ホルモン、TSH、α-MSHなどのホルモンが脂腺細胞の増殖を亢進することを見いだした。また、一般皮膚細菌感染症では、病巣より黄色ブドウ球菌を分離し、そのファージ型、コアグラーゼ型分類、抗菌剤に対するMICを検討するとともに、院内MRSA感染についての調査解析や、手掌の細菌数の変動を指標に速効性消毒剤の効果について検討を行った。
1 Akamatsu H et al (1992) J Invest Dermatol 99:509-511
2 Nishijima S et al (1992) J Dermatol 19:356-361

3. 自己免疫性皮膚疾患の発症機序に関する検討

 水疱性類天疱瘡では血清IgE高値、そう痒を伴う紅斑などIgEに関連した現象が認められる。そこで本症の病態におけるIgEの関連性について解析し、IgE抗基底膜抗体の存在や血清CD23値の上昇を観察した。また、組織染色にてIgE陽性細胞、高親和性IgEレセプター陽性細胞が、他の血清IgE高値を示す皮膚疾患とは異なる分布で類天疱瘡病変部に浸潤しているのが認められた。そのため、抗基底膜自己抗体に加えてIgEに関連した反応が類天疱瘡の病態に重要であることが示唆された。
Soh H et al (1993) Br J Dermatol 128: 371-377

研究の展望

  本講座の主要テーマである皮膚アレルギー・免疫学及び光免疫学は、紫外線(UVB)誘発皮膚癌に対しUVBが腫瘍免疫抑制効果を示す現象からスタートした。その後、紫外線の接触アレルギー反応抑制効果の解析を通じて表皮ランゲルハンス細胞の抗原提示機能や表皮細胞のサイトカイン産生能が発見されてきた。そのため、皮膚を場とする免疫現象の理解にもつながった、皮膚科学、免疫学にとって重要な学問といっても過言ではない。紫外線は功罪両面を有し、紫外線により誘発・増悪する疾患もあれば、PUVAやUVBなどの紫外線療法が劇的に奏効する疾患も数多く認められる。紫外線療法の作用機序は不明な点も多いが、主として免疫担当細胞や免疫機構に対する抑制作用が最も重要と考えられる。紫外線の適応疾患の拡大と副作用の軽減のため、適応疾患の発症機序と紫外線療法の奏効機序に関して臨床及び基礎的研究をさらに発展していきたいと考えている。

図4 紫外線照射皮膚へのhapten 塗布は、接触アレルギー感作が抑制され、tolerance が誘導される。



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