近年、高齢者の中途失明の原因として滲出型加齢黄斑変性(老人性円板状黄斑変性)が急増している。当科では宇山教授、高橋寛二講師を中心として、本症症例を1年間に新患150例、再来200例、計350例診療、その病型と経過を明らかにし、各病型について、予後とレーザー光凝固療法の適応を示した。光凝固を正しく行うにはフルオレセイン蛍光眼底造影(フルオ造影)で脈絡膜新生血管を確実に検出する必要がある。インドシアニン・グリーン蛍光眼底造影(ICG造影)はフルオ造影で検出不能な隠された新生血管occult vesselsも検出できる。ICG造影を応用して、レーザー光凝固治療成績を一層向上させた。又、大量の網膜下血腫例や中心窩の下の新生血管例には硝子体手術を行っている。
臨床研究と平行して、実験研究を行っている。サル眼およびラット眼の後極部網膜に強いレーザー光凝固を行うと実験的に脈絡膜新生血管が発生する。このモデルについて、新生血管の発生、成長、自然退縮の各時期に、網膜色素上皮が増殖して、色素上皮が新生血管の成長、退縮に大きく関与していることを証明した。特に新生血管の退縮は増殖した色素上皮の囲い込みによることを明らかにした(大熊 紘、板垣 隆、三木耕一郎、山岸和矢、高橋寛二)。
図1 サル眼に実験的に作った脈絡膜新生血管、(鋳型標本)
図2 脈絡膜新生血管発生部位にbFGFやVEGFの遺伝子発現をin situ hybridizationで証明した。
これらの研究成果は平成3年、第95回日本眼科学会総会で宇山教授が特別講演として報告し、パリの第3回International Symposium on Ocular Circulation and Neovascularizationにおいて宇山はMichaelson Medalを授与され、Michaelson Lectureを行った(1992)。 増殖性硝子体網膜症、増殖型糖尿病網膜症、難症の裂孔原性網膜剥離、特発性黄斑円孔、網膜上膜形成症、脈絡膜新生血管など難治の硝子体・網膜・脈絡膜疾患に西村哲哉助教授は積極的に硝子体手術(黄斑部手術を含む)を行い、極めて良好な成績を示し、その適応、術式、合併症を研究した。
図3 多発性後極部網膜色素上皮症 図4 Uveal effusion syndromeの強膜 緑内障の漏過手術に際し、球結膜弁下にマイトマイシン又は、5FUを塗布することにより、大きい漏過胞を形成し、眼圧降下作用が確実になり、手術成績が向上した(三木弘彦助教授、竹内正光、湖崎)。
ICG造影を眼底疾患にいち早く導入し、各種眼底疾患の病態解明に有用性を示している。加齢黄斑変性(福島伊知郎、高橋)、原田病、中心性網膜炎(松永、岩下)を積極的に研究した。造影写真読影のための基礎実験として、ICGの網膜脈絡膜における局在を組織学的に証明するのに成功した(松原 孝)。 種々の眼底疾患における網膜色素上皮の病態を一層解明する。とくにオルニチンの色素上皮障害の機序を解明する(植田真未、安藤彰、前田英美)。
この血管が加齢黄斑変性の原因であり、実験モデルになっている。
さらにインターフェロンβを全身投与すると色素上皮の増殖を促進し、新生血管を消褪させることを示した(戸部隆雄、岩下憲四郎、木本高志、和田光正)。最近は、種々の細胞成長因子( b-fibroblast growth factor,transforming growth factor-β)、vascular endothelial growth factorの新生血管への関与を、分子生物学的手法により証明した(緒方奈保子、山中理江、山本千加子、易先金)。
宇山昌延:脈絡膜新生血管、基礎と臨床、日本眼科学会雑誌85:1145〜1180,1991
2. 難治網膜疾患の硝子体手術の開発
3. 網膜剥離の臨床研究
裂孔原性網膜剥離を年間250〜300例、手術し、裂孔のジアテルミー凝固と強膜内陥術を基本とし、難治例には硝子体手術を行い、最終的には治癒率98%の良成績を得ている。この症例数と成績で当科は網膜剥離治療の西日本における最大の治療センターであることを示した。
胞状網膜剥離を来す多発性後極部網膜色素上皮症(Multifocal posterior pigment epithelipathy, MPPE )の疾患概念を示し、最近のICG造影により、脈絡膜血管の透過性亢進が本症の本態であり、その結果、網膜色素上皮は二次的に障害されていることを明らかにした(松永裕史、宇山)。更にステロイド薬が本症発症の誘因になりうることを示した(岸本直子)。
胞状の滲出性網膜剥離を来たす。フルオレセイン、ICG蛍光造影、UBMで病態を解明した。
真性小眼球(nanophthalmos)は胞状網膜剥離を伴う(Uveal effusion syndrome)。強膜が厚く硬いので、強膜を通る眼内組織液の眼外への流出が妨げられ、組織液が眼内に貯留している。強膜開窓術が奏効することを明らかにした(田上伸子、湖崎 淳、高橋)。
膠原線維の走行が乱れ、基質にプロテオグリカンが大量に蓄積し、強膜は厚く硬いことを証明した。
田上伸子:Uveal effusion、強膜の組織学的所見、日眼会誌97:268-274,1993
岸本直子:網膜色素上皮の修復過程に対する副腎皮質ステロイドの影響 日眼会誌 97:360-369,1993
裂孔原性網膜剥離、Uvealeffusion syndromeなどの脈絡膜剥離、閉塞隅角緑内障の隅角をUltrasound biomicro-scopy (UBM)により観察した(竹内正光、永井由巳)。
4. 緑内障の臨床研究
5. ICG蛍光眼底造影の導入
松原 孝:網膜脈絡膜におけるICG局在の組織学的証明、臨眼 49:25-33,1995
研究の展望
脈絡膜新生血管の治療を最終目的として、各種細胞成長因子をin vivoで網膜に証明し、その分子調節機構を明らかにする。抑制物質やアンチセンスをウイルスにとりこませ、眼内に注入して、遺伝子導入による新生血管の抑制をはかる遺伝子治療の発展が期待される。
1997年に導入された(Optical Coherence Tomography, OCT)の活用により、黄斑部の病変を解明し、黄斑部手術、黄斑下手術の手術適応基準を明確に示すことが期待される。
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