教室の伝統として、脳波に関する研究が主になされてきた。特に向精神薬の脳波に及ぼす影響を研究する定量薬物脳波学においては全国的に有名である。今後は、次々と新しい高度な脳波解析手法を用い、薬物のみならず精神疾患の研究、及びMRIやSPECTと組み合わせヒトの高次大脳機能の解明をめざす。電気生理班の他、神経病理班、精神病理班、リエゾン班がある。さらに、中枢薬理班を創設し神経伝達物質や受容体などより脳機能を直接的に反映する研究をめざす。
[1]注意集中時に出現するFmθ(front midlineθ)の発生源に関しての研究
最新の解析法であるLORETA(Low Resolution Brain Electromagnetic Tomography )を用いて視察脳波では中心部に出現しているものが、実は左右前頭部に発生源を持っていることを本邦ではじめて報告した(図1、図2)。
図1(左)注意集中時の脳波(左;Fmθ非出現時、右;Fmθ出現時) [2]精神分裂病の大脳空間構造の研究 [ 3 ]脳血管障害患者の画像解析 写真1 小脳歯状核のグルモース変性 生物学的精神医学と比較すると、精神病理学は精神医学の基礎でもあり、いわば地味で目立たぬ研究領域といえる。しかしその研究は、教室開設当時から今日まで脈々と続けられている。例えば、飽食の時代を反映する病態といわれる神経性過食症を本邦で初めて報告したのは当研究室の先輩であり、若者に蔓延する薬物乱用を約20年前に既に着目してその研究成果を報告するなど、今日的な問題を先取りしてきた。 コンサルテ−ション・リエゾン精神医学は、総合病院において精神科以外の領域で精神科医の行う診断・治療・教育・研究のすべての活動を含む臨床精神医学の分野である。われわれは、平成8年秋より、リエゾン専門外来を設置し、救命救急センタ−をはじめとする定期的回診や院内懇話会開催を含む活動を進めている。これに先立ち、過去2年間のリエゾン医療の実態、ならびに精神科医療・患者に対する他科の意識を調査し、うつ状態とせん妄の症例が多いこと、リエゾン医療を必要としているにもかかわらず理解が不十分であることなどを把握し、日本精神神経学会で発表した。また、他科から依頼のあった自殺未遂患者の分析や、個々のリエゾン症例報告(例えば、「うつ病期に著明な体重減少と腎不全をきたした双極性感情障害の1例」)も積極的に行っている。 電気生理班、神経病理班、精神病理班、リエゾン班の4班を軸に、新たに中枢薬理班を創設し、臨床研究及び基礎研究双方から、精神分裂病やアルツハイマー病などの精神疾患の病態の解明を目指す。
図2(右)Fmθの電流密度分布(電位発生源)
Dipole 追跡法を用いて精神分裂病の陽性症状(幻覚、妄想など)、陰性症状(無為、会話の貧困、感情鈍麻など)と脳波の関係を検討した。その結果、陰性症状が重篤になれば、脳波活動の重心が後方に移動し、陰性症状と前頭部の機能低下との関連性を実証した。
脳血管障害患者の臨床症状の重篤性、脳機能、脳血流量との関連を調べる目的で、脳波、SPECT検査を実施した。SPECT画像をCT画像上に投影し、関心領域ごとの脳血流量を測定した。結果、脳機能を表わす脳波と脳血流量の間には、高い相関が得られた。しかし臨床評価に関しては、脳波の方がSPECTよりも高い相関を示し、脳血管障害患者の臨床症状評価には脳波の方が鋭敏であることが明らかになった。
2. 痴呆に関する臨床神経病理学的研究(神経病理班)
神経病理学は腫瘍、変性疾患、末梢神経など広範な領域を研究対象としている。そのなかで我々は痴呆に呈する変性疾患の研究を行っており、対象は非アルツハイマー型痴呆が中心である。病初期から末期までの臨床経過について画像所見を含め詳細に観察し、その上で神経病理学的な検索を行っている。そして得られた結果を臨床へとfeed backさせ診断の確実性や治療技術の向上を図っている。近年、アルツハイマー型痴呆や脳血管性痴呆に関する研究は臨床・基礎を問わず飛躍的に進歩しているが非アルツハイマー型痴呆の重要性も言うまでもない。症例研究の集積が新しい知見への貢献である(写真1)。
(高齢発症の歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症より)
3. 精神病理学研究の展開と展望(精神病理班)
最近10年間を前・後期に二分すると、前期においては、主に青年期を中心とする分裂病や感情病圏の症候論や予後研究、転換性障害をはじめとする身体化を呈する病態の治療論、中年危機という視点からのうつ病研究などに成果を挙げてきた。後期においては、解離性健忘や多重人格などの解離の現象・病態・病因に関する研究、心的外傷に関する研究、家族を含めた境界例研究のほか、在宅痴呆老人を介護する家族への心理教育の研究も続けている。特に全生活史健忘と在宅痴呆老人の介護者援助に関する研究は、学会で高く評価されマスコミにも取り上げられており、時代の要請に応えた臨床的研究といえる。
この度のセンター構想をもった附属病院の建替を機に、身体診療科との連携を重視した総合病院での精神科の役割がますます期待される。
4. コンサルテ−ション・リエゾン精神医学に関する検討(リエゾン班)
研究の展望
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