我国では平成10年1月現在215名の慢性肉芽腫症(CGD)患者が登録されている。本症の診断には患者好中球の活性酸素産生能が欠損または低下していることを証明する必要がある。教室では2',7'-dichlorofluorescin diacetate(DCFH-DA)を用いてフローサイトメトリーで好中球過酸化水素産生能および貪食能を同時に測定している。本法は微量の採血で患者や保因者の診断が可能である。また、FITC標識抗ヒトIgG(Fc)モノクローナル抗体およびPE標識CD16抗体を用いてフローサイトメトリーで抗好中球抗体を測定する方法を開発し、各種好中球減少症の診断に供している。特に、慢性良性好中球減少症の原因は好中球結合IgGによって生じることが示峻される。 新生児期における易感染性と感染の重篤化の原因として、好中球走化能・付着能が成人より低下していることがクロミウム標識好中球を用いた方法で確認された。好中球付着能・走化能の低下の原因として、好中球subpopulation、膜電位、細胞内微細構造であるF-アクチンの感受性低下が関与している。ガンマグロブリン投与による好中球貪食能促進は、血清IgG値が低い児に投与した場合のみに効果が期待でき、過剰の投与は過酸化水素産生能や貪食能の低下を招来する。 肺胞マクロファージから産生されるsuperoxide anionは、胎便吸引によって著明に増加し、これによって気管上皮細胞のICAM-1の発現を促進させ、組織障害をきたす。また肺胞マクロファージからのエンドセリン-1の過剰産生は気管支肺異形成を発生させる重要な要因となる。エンドセリン1は、未熟児の輸血やリコンビナントエリスロポエチン投与によっても増加する。 聴性脳幹反 (ABR)・短潜時体性感覚誘発電位 (SSEP)・聴覚誘発電位 (VEP)・エアパフや磁気刺激誘発電位 (MEP) などを駆使した各種神経疾患の電気生理学的検査および発達的変化を主体とした多くの基礎的・臨床的研究がある。脳波は解析ソフト (FOCUS)により発作波を平均加算し、BESAソフトにより双極子の活動電源数の推定や局在決定を行っている。 ウサギを免疫して得られた抗ヒトトレハラーゼ抗体は、ヒト腎皮質組織のImmunoblot分析の結果75kDaの分子量であり、蛍光顕微鏡では本酵素は近位尿細管にのみ局在することが明らかとなった。トレハラーゼは基質特異性が高く、新生児仮死や薬剤による尿中トレハラーゼ活性の上昇は、新生児の尿細管障害の指標になりうる。 1995年10月から臍帯血を採取・処理・保存している。採取した臍帯血量は平均70.4ml、赤血球除去後の有核細胞の回収率は平均71%であり、コロニーアッセイによる保存臍帯血のCFU-GM数は平均3.6×105個である。骨髄移植および幹細胞の基礎研究が特徴である本学第1病理学教室、産婦人科学教室、第1内科学教室、輸血部の共同で近畿臍帯血バンク発足から参画しており、1998年第4回近畿臍帯血幹細胞移植研究会を担当する。 小児科学教室では、小児の発達・疾患について様々なテーマで研究が行われ、これらの研究成果が実際の患者の臨床診断・治療の現場で役立っている。比較的まれな疾患である慢性肉芽腫症やその他の好中球異常症の診断には教室独自の診断技法を確立しており、紹介患者が多い。発達免疫学や発達神経学の電気生理、発達腎臓学など新生児期から小児に至る過程の種々の研究が行われているが紙面の関係でその一部を紹介した。今後の小児医療に実際に役立つ研究が、本学における他の研究室とも協力しながら、あらゆる分野で推進されることが望まれる。
Hasui M et al.(1989) J Immunol Methods 117:53-58.
Hasui M et al.(1991) J Lab Clin Med 117:291-298.
Hasui M et al.(1993) J Infect Dis 167:983-985.
2. 新生児好中球機能に関する研究
Kinoshita Y et al.(1989) J Immunol Methods 124:29-33.
Masuda K et al.(1989) Pediatr Res 25:6-10.
Kinoshita Y et al.(1991) J Pediatr 118:115-117.
Fujiwara T et al.(1997) Clin Exp Immunol 107:435-439.
3. 気管支肺異形成の成因に関与する研究
Kojima T et al.(1992) Eur J Pediatr 151:913-915.
Kojima T et al.(1993) Lancet 1023-1024.
Kojima T et al.(1994) Life Science 54:1559-1562.
Kojima T et al.(1996) Pediatr Res 39:112-116.
Yamamoto C et al.(1996) Acta Paediatr 85:1232-1235.
4. 小児・新生児における電気生理学的研究
Yasuhara A et al.(1990) J Child Neurolgy 5:191-194.
Yasuhara A et al.(1990) Electroencephalogr Clin Neurophysiol 77:93-100.
Yasuhara A et al.(1991) Brain Dev 13:82-86.
5. ヒトTrehalaseの構造および腎発達との関係
Sasai-Takedatsu M et al.(1996) Nephron 70:443-448.
Sasai-Takedatsu M et al.(1996) Nephron 73:179-185.
Ishihara R et al.(1997) Gene 202:67〜74.
6. 臍帯血バンク設立に向けての基礎研究
Ogata H et al.(1995) Proc Natl Acad Sci USA 92:5945-5949.
7. 腹部超音波検査による小児疾患診断に関する研究
非侵襲的な腹部超音波検査が小児疾患の診断に有用であることはすでに確立している。当科では、1989年から積極的に本検査を導入し、腹腔内臓器や血管系の形態および機能診断に利用している。最近では、起立性調節障害の発症機序・食物アレルギー時の腸管浮腫の実態、腹腔内リンパ節腫大を伴う小児疾患の病態などについて臨床研究を行っている。また、超音波検査を理学的検査の一部(第2の聴診器)として利用する外来診察を実践している。
Takaya J et al.(1997) Pediatric Radiology 27:178-180.
Yamamoto Y et al.(1998) Pediatric Radiology 28:177-178.
研究の展望
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