臓器移植を成功させるには、機能がよく温存された臓器を摘出し、移植後充分機能すべく保存し、安全確実に手術を行うことである。
脳死個体数が限られた我国では、得られた臓器を温存し、これを有効に利用するためには保存時間の延長のための保存法の開発が急務である。
現在4°Cでの臓器の保存、輸送が一般に行われているが、我々はまず、実験的に0°C以下でも保存が可能であることを小動物の肝で確認し得た。
現在、臨床応用に向けた大型動物の肝での保存期間の延長を試みている。
図1 Bunina小体の電顕像
肝炎、肝硬変、肝癌は国民病であり、ウィルス肝炎により引き起こされる肝硬変症例に対する治療は、対症療法にとどまっている。
肝硬変肝切除後、残存肝の再生が、HGFにより促進されることを我々は確認し得た(図1)。そこで、肝切除を行わない硬変肝動物にHGFを投与し、この硬変肝の再生を促進せしめ、臨床利用を念頭においてその機構の解明を行っている。
図1 ●はHGF投与群、◯は対照群を示す。ラットの肝切除後、HGFを持続的に投与することにより、残存肝の再生が促進されることを示している。
脳死個体より得られる肝の提供数は、非常に少ない。また、生体肝移植時に得られる肝は、成人Recipientにおいては容積が不充分である 図2 急性肝不全ブタの動脈血で摘出ブタ肝を灌流した時、この摘出肝の酸素消費量を24時間みたものである。 第1病理学教室の指導を受け行っている。 図3 IL-1βにより肝細胞のATP含有量は低下するが、これはL-NMMA により、回復していることを示している。 図4 AHCC(キノコ抽出物)を経口投与していた群では、肝細胞癌術後の生存率が、非投与群より有意に高かったことを示している。癌の進行度、輸血量、手術時間、内科的治療等について両群に差は見出せなかった。 神経内科学講座は平成9年10月1日に本学に創設されたばかりの非常にまだ若い教室である。ゆえに本学での研究歴はないが、エネルギーに溢れている。これから上に掲げたようなテーマを中心に神経内科学の臨床的研究、分子生物学的、神経病理学的、神経放射線学的、さらに神経治療学的研究を幅広く進めていきたい。その上で他の基礎医学講座や関連施設との共同研究を積極的に推し進めたいと考えている。
。
そこで、一時的にRecipientの肝を残したまま異所性に生体より得た肝を移植し、この移植肝の再生を促進する。ついでこれを充分再生せしめたのち、 Recipient肝を摘除、あるいは倭縮せしめる手術手技の確立を大型動物を用いて行っている。
4. 摘出灌流肝による肝不全の治療法の開発
急性肝不全に対して、積極的に高額医療により治療を行っても、その死亡率は、尚高い。我々は、これまで摘出肝(ブタ、ヒヒ)を用いた肝補助装置において、肝不全症例の治療を行ってきた。その装置は、複雑かつ高値のため、血漿交換と同じ簡便さで治療を行える肝補助装置の開発が、急務である。我々の開発した新しい肝補助装置により、大型肝不全動物の代謝的肝補助療法が可能であることが、判明した(図2)。
臨床利用時の具体的問題点を解決するための実験、研究を現在行っている。
急性肝不全ブタからの代謝負荷により、摘出肝の酸素消費量は著明に増加している。Nは正常ブタ、L.F.は急性肝不全ブタを示す。
5. 骨髄細胞の門脈内注射による免疫寛容誘導
マウスを用い、骨髄細胞(特に造血幹細胞)を静注すると、肝臓にtrapされ、chimerismが成立し、免疫学的寛容が誘導される。そこで、この免疫学的寛容の誘導機序を解析し、さらに大型動物(豚)において、致死的な放射線照射をせずに、骨髄細胞あるいは脾細胞を門脈より注射することによって、mixed chimerismを導入し、長期間にわたって免疫学的寛容を誘導し、膵臓あるいは異所性の移植肝等の長期生着を確立すべく、また、ヒトへの応用の基礎とするための研究を行っている。マウスを用いて、
1)Clonal anergy;
2) Suppressor cells;
3)Mixed allogeneic chimerism(胸腺内のMφ/DCのキメリズム)
の研究を行い、また、ブタを用いて
1)門脈より注射する骨髄細胞の細胞数、投与時期と回数の検討。
2)免疫抑制剤(CsA,FK506etc.)の短期投与の投与回数と時期の検討。
3)臓器移植を施行する時期の検討を行っている。
6. 多臓器不全の病態のRedox理論による解明
医化学教室に指導を受けて行っている。
肝細胞で、IL-1βがiNOS を発現せしめ、このため生成されたNOが肝シトコンドリアの電子伝達系を抑制し、Redox stateを低下せしめ、肝細胞のATPレベルを低下せしめることが判明した(図3)。そこで、臨床例において、NOを測定したところ、大きい手術侵襲でもNOは全身では生成されない。しかし、敗血症、多臓器不全で死亡する症例ではNOの上昇時、肝のRedox stateが低下していることが判明した。
重症患者におけるNO代謝の臨床的意義をRedox理論にもとづいて、解析を続けている。
7. その他の臨床研究
(1) BRMを用いた肝癌症例の生存率の改善(図4)
(2) 選択的熱凝固療法による進行膵癌 の治療
(3) アシアロシンチを用いた肝予備能の評価
(4) 3次元CTの臨床応用
研究の展望
| INDEX | BACK | NEXT | 第一外科 HOME |