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附属香里病院
Kori Hospital
病院長 大原 孝
内科小児科外科皮膚科放射線科

1  内科
[1]虚血性心疾患における負荷
99mTc-tetrofosmin/安静TI心筋SPECT併用法の有用性についての検討

 T1心筋シンチは虚血性心疾患の診断に有用であるが、新たな心筋血流製剤であるTc製剤は大量の投与が可能となり、鮮明な画像が得られる。そこで、運動負荷像にTc製剤、安静像にT1製剤を用いた方法の有用性について検討した。対象は虚血性心疾患20例(狭心症10例、心筋梗塞10例)である。運動負荷後像に99mTc-tetrofosmin 740MBq、他日に安静像として、201-T1 111MBqを用い心筋SPECTを撮像し、冠動脈造影所見と対比検討した。運動負荷による心筋虚血の検出は、sensitivity76%、specificity 93%、accuracy 85%、心筋梗塞部を含めた冠動脈病変の検出はsensitivity 79%、specificity 93%、accuracy 87%であり、負荷像に良質な画像が得られるTc製剤、安静像にviabilityを評価できるT1を用いた本法は、虚血性心疾患の診断に有用と考えられる。
 当科では平成7年10月より心臓カテーテルを開始し、虚血性心疾患の診断・治療を中心とした循環器診療が充実したが、急性期の対応や心不全に関する臨床研究を展開し、さらなる向上に努めている。

図1 狭心症例(39歳 男性)のタリウム安静像(上)および99mTc-tetrofosminによる運動負荷像(下)。
負荷像で前壁領域に灌流低下を認め、冠動脈造影では左前下行枝に狭窄を有する一枝病変であった。

[2] 消化器疾患の研究と課題

 Helicobacter pylori(Hp)の発見は、C型肝炎ウィルスの発見と共に、消化器病学の今世紀最大のトピックスであろう。当科においてもNIHの勧告に基づいて、抗生物質(AMPC)、メトロニダゾールおよびプロトンポンプ阻害剤の三者併用療法を行い、除菌率90%以上の高成績を得ている(図2)。今後、薬剤耐性菌の克服とHpによる胃発癌について、臨床研究を展開する予定である。
 肝は物質代謝の中枢臓器であり、肝疾患では種々の代謝異常が出現する。当科では、肝硬変症におけるアミノ酸と糖代謝異常に注目し、新しい薬剤による治療を試行している。慢性ウイルス肝炎については、インターフェロン(IFN)の抗ウイルス作用に着目し、臨床研究を行なってきた。これまでに得られた知見に基づいて、より効果的なIFN療法の開発に寄与したい。
当科では終末期医療にも積極的に取り組んでおり、身体の治療はもとより心のケアにも重点をおいた医療を目指している。これまでの培われた豊富な経験を活かし、癌末期における苦痛緩和療法や在宅医療などの社会的ニーズにも貢献したいと考えている。

[3]各疾患における脳認知機能(P300)の検討

(1)無症候性脳梗塞と事象関連電位(P300)
 脳梗塞の再発は血管性痴呆への進展といった意味で注目されている。そこで、抗血小板薬治療下における多発性脳梗塞患者の血小板凝集能、MRI所見、改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、P300等を追跡し、抗血小板薬の痴呆予防効果について検討した。1年間の追跡期間中、24%に無症候性の小梗塞再発を認めた。全例のHDS-Rは変化しなかったが、再発例ではP300の頂点潜時は有意に延長した(図3)。抗血小板剤の痴呆予防効果が示唆されると同時にP300は痴呆の早期発見に有用であることが推察された。
(2)尿毒症とP300
 糖尿病合併例と非合併例において血液透析前後のP300の変化を比較検討した。合併例は非合併例に比して有意にP300の頂点潜時の改善傾向は認められなかった。糖尿病性血管症の高次脳機能への影響が示唆された。

2 小児科
[1]小児における脳障害の電気生理学的研究

 脳障害の定量的な診断には通常脳波が用いられるが、乳幼児や小児の場合は検査に協力が得られず十分な診断もできないことが多い。我々は、乳幼児から小児に脳機能を評価する方法として以下の方法を用い、検査方法や正常値について確立した。1)眼輪筋反射、2)聴性脳幹反応(ABR)、3)視覚誘発電位(VEP)、4)短潜時体性感覚誘発電位(SSEP)、5)超音波脳血流法、6)脳電位、7)双極子誘導法についてである。眼輪筋反射とABRは脳幹機能を評価することができる。我々の小児の眼輪筋反射についての研究は世界的にみても独創的である(図4)。VEPやSSEPは大脳の機能が評価できるほか、各々の神経経路の異常についても診断できる。ドップラ−血流計を使用して脳血流の非観血的測定を可能とし、異常値の評価方法について検討した。また、脳波の解析方法として脳電図や双極子誘導法を小児に採り入れて検討を続けている。脳電図は、脳波障害の局在を時間的かつ空間的に評価でき、大脳の機能障害の評価に優れている。また、双極子誘導法はてんかん発作波の焦点や誘発電位の発生源の検討に用いることができる。

図4 眼輪筋反射の発達変化。
上から、新生児期(生後6日)、小児期(8歳)および成人(30歳)の例。負荷像で前壁領域に灌流低下を認め、冠動脈造影では左前下行枝に狭窄を有する一枝病変であった。

1)Yasuhara et al.(1990) Electroencephalogr Clin Neu- rophysiol 77:93-100.
2)Yasuhara et al.(1991) Brain Dev 13:82-86

3 外科
[1]消化器癌に対する合理的治療 戦略 −集学的治療から在宅治療まで−

  (1)基礎的検討
1) ヒト大腸癌・乳癌組織におけるPyNPase,TS,TK活性測定に基づいた腫瘍特異的癌化学療法の検討(図5)。
2) 消化器癌周術期における細胞外マトリックス:ファイブロネクチンの動態とその意義の関する検討(図6)(平成九年度日本外科代謝栄養学会学会賞受賞)。
(2)臨床的検討
1) 食道癌・胃癌に対する癌化学療法− 奏功率の向上と副作用の軽減を目指して;低用量CDDP+5-Fu持続静注法
2) 消化器癌患者の対する在宅医療の導入;在宅癌化学療法、在宅ホスピスケア、HPN/HEN
3) 消化器癌外科症例の深在性真菌症に対する診断および治療に関する問題点の検討
4) 消化器癌郭清術後の腸管蠕動運動;Sitzmarkによる腸管蠕動定量的把握の試み

図5 Immunostaining of Thymidine Phosphorylase
A;normal colorectal mucosal cells B;colorectal carcinoma cells  C;microvessel staining with anti-factor VIII antibody(100×Field) D;(400×Field)
図6 Modular Structure of Fibronectin

[2] 血管疾患における将来展望と戦略

 血管外科の今後はminimum invasive surgery(MIS)とintra-luminal vacular techniqueの2点に絞られる。すなわち、day surgeryやout patient surgeryの推進を最大の課題とする。
(1)動脈系疾患
Thrombolysis、PTA、atherectomy、intravascular stent、intravascular graftを様々な形で組み合せた血管内治療の推進
(2)静脈系疾患
下肢静脈瘤においては結紮併用静脈瘤硬化療法(out patient surgery)をより根治性の高いものに改良を勧め、深部静脈弁不全に対しては積極的に弁形成術を行う方針

[3] 鏡視下手術の展開

  鏡視下手術はminimally invasive surgery:MISの代表的手法で、当科では鏡視下手術を重要な将来的課題の一つと位置づけている。胆嚢摘出術は無論のこと、総胆管切開ドレナージ術、脾嚢胞・肝嚢胞切除術、あるいは腹腔鏡補助下大腸切除術など多くの鏡視下手術は既に手がけ安定した治療成績を得ている。今後は食道アカラシア、食道裂孔ヘルニア、食道癌非開胸根治切除術、胃癌胃切除術などにも対応すべく、ソフトとハード面の充実を計り、鏡視下手術の教育プログラムの策定、各科との連携推進、情報交換システムの確立を目指し積極的に臨床展開を進める。

4 皮膚科

[1]皮膚細菌感染症からの分離細 菌:特に黄色ブドウ球菌(含MRSA)について

 皮膚の細菌感染症から分離される菌種は黄色ブドウ球菌(黄色ブ菌、Staphylococcus aureus、S.aureus)が最優位であり、このことは長い期間変化していない。図に関西医科大学皮膚科における分離細菌の過去20年間の分離状況を示した。黄色ブ菌の中にはMRSAを代表とする薬剤耐性菌も多く、院内感染の原因菌となることもある。
当科では皮膚から分離される細菌特に黄色ブ菌の状況を常に把握し、薬剤感受性性の動向を検討している。TABLEに最近1年間に分離された黄色ブ菌の薬剤感受性(MIC90)を疾患別に示した。薬剤の中ではGentamicinの感受性が悪く、MRSA(methicillin-resistant S.aureus)はImpetigo,Ulcer&decubitusなどから分離される率が高かった。

1.Nishijima et al.(1997) J Int Med Res  25:1-7.
2.西嶋攝子 他 (1998) 臨床皮膚科 52:7-12.

5 放射線科

1]放射線科内LAN(Local Area Network) 構築に関する研究

 放射線科内電算化には、照射録、オーダリング等の文字情報を扱うシステム(RIS)と、CT,MRI等の画像を扱うシステム(PACS)とのLANを介しての効率的な統合が必要である。LAN上での画像通信技術は、近年著しい発達を示しているが、CRT診断等の業務としての運用は、まだ全国的にも少ない。我々は1985年RIセンター内ガンマカメラとスーパーミニコンVAX11/750間で画像通信を開始して以来、Ethemet LAN導入(1988)、放射線科検査録管理(1990)、私学助成による画像保管装置とFDDI LAN導入(1996)、インターネットLAN、ATM LANとの接続(1997)と、臨床的に画像診断に耐え得るLAN構築を行ってきた。右図に現在の放射線科LANを示す。今後学内電算化構想に対応し、全学および地域との通信ネットワーク整備をめざしている。

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